今や
神戸香屋の

おっさんとなった私が、南京町の一角でバリ雑貨店を営んでいた10年ちょっと前。
ゴールデンウイークになんやら信じられないくらい売れ、在庫が少なくなったので急きょ

バリへ。

AJIが奥さんの田舎へ帰省中、WINATAと二人で仕入れに回ります。
もうその頃には、いろいろなアイテムに対しての仕入れ先はほとんど確定していたので、苦労はありません。
イカット、バティック、人形、ビーズサンダル、バッグetc.を順調に仕入れ、さあ、ウブドのATA屋へ。

WINATAが、

「高橋さん、ATAね、いい店見つけたよ。トゥガナン出身の社長で実家がATAのファクトリーだから安くていい物。行ってみる?」

「ええやないか!行ってみよか」
実はATA(バリ島の植物を編んだバッグやカゴ、ボックス、ランチョンマットやコースター等)の仕入れ先のウブドのおばはん、うるさすぎるのと娘のワキガが強烈なのでちょっと嫌になっていたところ。
新規店舗、

WINATAの友人の親せきということなので安心でしょう。
ウブドの中心街から10分程度手前にその店はありました。
品ぞろえもそこそこ

ちょっと埃っぽいくらいです。
社長

満面の笑みで迎えてくれます。

「よく来てくれた。さあ、行こう」

「どこへ?何言うてんねん、この社長?」

「社長、どこ行くの?来たばかりで何も買っていない」

「トゥガナンや、トゥガナン。今からなら夜には帰って来られる」
トゥガナン村。バリの先住民族、バリアガの村で、ATAのバッグやカゴ細工はこの村の特産品です。
この村出身の社長、実家のファクトリーで直接買い付けをさせてくれると言うことです。

「おい、ええ話やけど何時間かかる?」

「え~と、だいたい4時間くらい」

「今、昼

1時か。行けるな、行こう」
と、言うことでトゥガナン村へゴー

道中の山道、小便がしたくなり立ちション。社長も来ます。
社長、木陰からどんどん川の方に降りて行きます。

「どこ行くねん、コラ!どこ行くねん!」

「ちょっと来て、高橋さん。ほら、あそこ」
バリの山の中、小さな村近くのきれいな川にマンディ(水浴び)をしている

女性が見えます。
この辺り、まだまだシャワーのある家はない様子、川がお風呂です。

「おー!若いね、女の子。はら、高橋さん、見て」
50m位向こうに裸の女の子たち。私

紳士です。見る気はありません。しかし、なぜか目が離せなくなり…

これがヒンドゥーのブラックマジックか

その時、

【ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!】
脳天に馬場チョップを食らったのかと思うくらいの

衝撃が


社長も

WINATAも頭を押さえ、のたうちまわっています。
目からの火花が治まり、振り返ると魔女の杖のような棒を持った


老婆が鬼のような形相で仁王立ち。


「この、馬鹿者ども!帰れ!」

「痛い~、頭、いた~い」

「このスケベ社長め!いらんもん、見つけるな!」
その時からこの社長

私たちに日本語で「スケベ」とあだ名をつけられました。

「スケベ、どういう意味?」

「モテ男や。よくモテる男。スケベ、男前やもんなあ」

「そうか。ハンサムか。うん、よし」
スケベ、ご満悦です。
チャンディダサの夕日に見とれながら再び山道へ。

4時間弱、トゥガナン村に到着。
スケベの実家

で商品を仕入れていると家の前に人だかりができています。

「日本人、次はうちに来てくれ。ここに無いもの、うちにはある」
誘われたので行ってみます。しかし、デザインは同じものばかり。まあ、

スケベの顔を立ててうまく分散させて購入。

ワゴン車にギシギシいっぱいのATA製品を仕入れ、充実の仕入れが終了。

WINATAがわざとブレーキを強く踏みます。

「ドサッ!ぐぇぇ…」ATAが崩れ、スケベの姿が見えなくなりました。
面倒くさいのでスケベは埋もれたままで

約3時間、走り続け到着。
商品の中で

スケベ、熟睡しています。
ATA、特殊な染料を塗ってから燻します。そうすることによって、独特の茶色の風合いが出、虫がつかなくなります。
しかし、たくさん集まると植物の燻製独特の匂いです。それに埋もれて熟睡はできません。

スケベ、さすが慣れているのでしょう、まだ新しいATAの染料が顔についても平気で熟睡です。
スケベを起こし、

「今日はありがとう。また、来るわ」と握手。
スケベ、

「高橋さんにあえてよかった。ところでスケベはアルファベットではこうか?」

「sukepeh」